賃料(家賃)増額請求・賃借人編

はじめに

この記事では、大家さんから建物の賃料(家賃)の増額を求められた場合、賃借人として注意すべきことなどについてご説明します。

この記事を書いている2023年11月時点で、物価は上昇傾向にあり、今後も続くことが見込まれます。不動産経済研究所が7月に発表した2023年上半期の新築分譲マンションの平均価格は、東京23区内が前年同期に比べ約6割高い1億2962万円だったと報道されています。資材高や人手不足などで建築コストが膨らんでいることが要因とみられています。

中古マンション価格も上昇傾向にあると指摘されています。

物価が上昇し、マンション価格は、新築・中古ともに上昇していますが、賃料(家賃)相場が上昇しているという報道は、今のところまだ目につきません。

ただ賃料(家賃)水準は、元々、物価の上昇に少し遅れて、上がるという性質があると言われています(遅行性)。そのため、今後、次回更新時に賃料(家賃)の増額を求められるという事態が今後増える可能性があります。

このような現在の経済情勢を踏まえ、賃借人が、大家さんから賃料(家賃)の増額を求められた際に、どのように対処すればよいか、という視点で、以下、ご説明します。

契約書を確認する

そもそも契約書で、一定の期間、建物の賃料(家賃)を増額しないとの特約がある場合は、その期間が経過するまで、大家さんは、賃料(家賃)を増額することができません。借地借家法第32条第1項但書で、「一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。」と規定されているためです。

そのためこのような特約がないか、契約書等を確認してください。

ただ通常は、大家さん側は、そのような基本的なことは確認した上で、賃料(家賃)の増額を求めてくると思います。賃料(家賃)の増額を求められているということは、そのような特約はない可能性が高いと思います。

近隣の賃料(家賃)相場を把握する

大家さん側から、賃料(家賃)の増額を求められる場合、まず管理会社から増額に関する連絡を受けるはずです。あるいは管理会社ではなく、大家さんから直接、増額についての連絡があるかもしれません。

場合によっては、「新賃料(家賃)は〇〇万円です。」と決定事項であるかのように、通知してくる場合がありますが、賃料(家賃)の増額は、一方的に決めるということができませんので、通常は、増額についての打診、あるいは提案ということで連絡を受けることになります。

その場合、まず近隣の同等の物件の賃料(家賃)相場を把握するようにしてください。

また単純にその時点の相場を把握するだけではなく、どの程度、変動しているかについても把握できるとよいです。変動の比較対象は、賃貸借契約を締結した時点(更新している場合は更新契約を締結した時点)と増額請求を受けた時点です。近隣相場が変動していない場合は、増額が認められない可能性が高くなります。反対に、近隣相場が上昇している場合は、その上昇率を考慮して上昇が認められる可能性が高いと言えます。

賃料(家賃)増額請求は、必ずしも近隣の賃料(家賃)相場に依存するわけではありませんが、この点が最も重視される要素です。

話し合いが決裂した場合のリスクを具体的に把握する

話し合いが決裂し、それでも大家さんが、断念しない場合は、大家さんは裁判所に賃料(家賃)増額を求める調停の申立てをすることになります。

そのため賃借人は、申し立てがあれば、裁判所へ呼び出され、指定された日に出席する必要があります。弁護士に委任する場合は、弁護士の費用を負担する必要があります。この時点では、代理人に選任しなくても対応できる場合もあります。また裁判所の呼び出しを無視するという方もいるかもしれません。しかし多くの方は、無視することはできないでしょう、裁判の当事者となって先行きが見通せず、不安を抱えることになります。

また調停は、平日の昼間に行われます。指定された日時に裁判所に出頭しなければなりません。

賃料(家賃)の増額が調停で決まった場合、請求を受けてから増額が決まるまでの期間の賃料(家賃)の増額分を一括で支払うことが必要となるかもしれません。調停での話し合いが決裂した場合は、大家さん側の判断で、さらに訴えを提起される可能性があります。この場合も代理人を選任することは必須ではありませんが、訴えを提起された場合は、適切に対応しないと敗訴するリスクが高くなりますので、ほとんどの方にとって、代理人を選任して訴訟対応する必要に迫られます。

他方で、調停申し立て前の話し合いが決裂した場合は、大家さん側は、それでも賃料(家賃)の増額請求自体を断念する可能性もあります。なぜ断念する可能性があるのかについては、ここでは詳しいご説明はしません。個別にご相談があった際には、ご説明いたします。

大家さんと交渉する

上にも書きましたが、大家さん側も一方的に賃料(家賃)の増額を決めることができません。賃料(家賃)の増額については、賃借人と大家さん側とで、協議して決める必要があります。

近隣の賃料(家賃)相場が上昇している場合は、上昇が認められる可能性が高いので、そのような場合は、上昇率を参考に、賃借人側としてもある程度、譲歩し、また大家さん側にもある程度、譲歩してもらって、新賃料(家賃)を取り決めるのが妥当です。

新賃料(家賃)を取り決めることができる場合は、合意書面を作成して下さい。合意書面については通常は、大家さん側が用意すると思います。

更新の際に新賃料(家賃)を決める場合は、更新契約書で新賃料(家賃)の金額を決めるのが良いと思います。

まとめ

話し合いが決裂した場合のリスクを念頭に置くと、賃借人の負担は少なくありませんので、賃料(家賃)相場が上昇している場合は、お互いに譲歩して、ある程度の賃料(家賃)の増額に応じるのが妥当です。

ちなみに賃貸トラブルが生じた場合の弁護士の費用を賄う弁護士費用保険もあります。今後、賃料(家賃)の増額を求められる可能性がある場合に備えて弁護士費用保険に加入しておくと、万一の場合に、弁護士費用の負担について心配することなく、弁護士に相談したり、依頼したりすることができます。退去時にトラブルとなるケースもありますので、弁護士費用保険に加入することについて、一度、検討しておくことをお勧めします。

以上

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