示談に関するよくある質問

示談書、示談交渉に関するよくある質問について、なるべく簡単にお答えいたします。

Q 示談書には何を書くべきですか?

A 何についての示談書なのかにもよりますが、交通事故による損害賠償についての示談書であることを想定すると次のような項目について、記載するのが通常です。

事故発生日時

事故を特定するために記載します。時間を特定できない場合は、「午前5時15分ころ」とか、「正午頃」などの記載にとどめることもあります。

事故発生場所

これも事故を特定するために記載します。

「四谷三丁目交差点」とか、「3丁目13番7号付近」などと特定しますが、明確に特定できない場合は、曖昧な表現になることもあります。交通事故の場合は、交通事故証明書に記載されているので、それを参考にするとよいです。

事故態様

「追突事故」「衝突事故」「接触事故」など事故態様について、記載します。

事故当事者氏名、車両登録番号

加害者名、被害者名、車両を特定するための情報を記しします。

示談金の金額

加害者が支払う金額を記載します。

確定した金額を記載するのが通常です。

修理額が確定していないなどの理由で、金額を決めずに、「修理費用相当額」というように決めたいという場合もあるかもしれませんが、避けた方がよいです。

なお、保険会社が作成する示談書のテンプレートでは、損害額を記載することになっていると思います。

損害額を示談書に記載した場合、その示談書の損害額と実際の損害額が違っていると、錯誤を理由に示談書による意思表示を取り消すとの主張できることになります(常に取り消すことができるわけではありません)。

示談書は、紛争の終局的な解決を目指すものですので、弁護士などの法律実務家は、示談書に損害額は、記載しないようにアドバイスすることが多いと思います。

支払条件

示談書を取り交わす際に、示談金を現金で支払うという場合もありますが、後日振り込みとすることが多いと思います。

その場合は、振込先の指定、支払期限、期限に遅れた場合の遅延損害金などを取り決めます。

分割払いの場合は、分割金の支払額、支払期限、期限の利益喪失条項、遅延損害金などを記載します。

事故の責任割合

これも保険会社の示談書の雛形などでは、記載するようになっていますが、記載する必要はありません。

なお責任割合は、過失相殺と損益相殺を考慮した後に、責任の割合を決めるということになるはずですが、過失相殺はしないが、損益相殺はするという場合もあれば、その反対もありますし、また過失相殺も損益相殺も行う場合もあります。その結果として、加害者が被害者に対して支払う金額が決まるわけです。示談書では、交渉の結果、支払うことが決まった示談金額を示談書に記載すればよく、責任割合を記載する意味はありません。

物損について先に示談して、傷害については、治療が終了してから、あるいは症状が固定してから示談するという場合があります。そのような場合は、物損についての示談の際に過失割合を取り決めてしまうということが考えられます。

そのような場合、傷害について示談する際に、一度、取り決めた過失割合を前提に、傷害についての賠償額も交渉するということになりまる。それが良いのかどうかについては十分検討する必要があります。

清算条項

「甲及び乙は、甲乙間には本件に関し、本合意書に定めるもののほかに何らの債権債務がないことを相互に確認する。」(「本件に関し」あり)

「甲及び乙は、甲乙間には本合意書に定めるもののほかに何らの債権債務がないことを相互に確認する。」(「本件に関し」なし)

などの文言の条項です。

示談書の条項の中で最も重要な条項の一つです。

清算条項を入れる意味を理解できない方は、必ず専門家にその意味を確認してから示談書を取り交わしてください。そうでないと思わぬ損失を被る可能性があります。

署名捺印(記名押印)

記載事項ということではありませんが、示談書の当事者が、記載内容を理解し、承諾したことを明らかにするために、署名捺印(記名押印)するのが原則です。

Q 示談書は、自分で作成できますか?

A 自分で作成することもできます。

というより、弁護士や行政書士などの専門家が案となる文書を作成しても、最終的にその示談書に署名捺印したのであれば、その当事者の作成した文書ということになります。後になって、その文書は、自分にとって都合が悪いからということで、無効を主張したり、取り消したりすることは、できないことがほとんどだと思います。

そのため示談書に記載されている内容については十分に理解しておく必要があります。

Q 示談書を作成するときの注意点は?

A この点は、簡単に説明することが難しいですが、とにかく上にも書きましたが、示談書に署名捺印するご自身が示談書の記載内容をよく理解し、納得するようにしてください。

よろしければ「示談書作成のポイント」をご参照ください。

Q 示談書を取り交わすには?

A 示談書作成の目的にもよりますが、前提として示談書に記載する内容について、まず示談交渉してください。

示談交渉は、対面でも構いませんし、電話でもメールやSNSでのやり取りでも構いません。

示談交渉で取り決めるべき内容は、記載事項を参照し、「Q 示談書には何を書くべきですか?」の回答で記載した内容のうち、意見対立が生じる可能性がある部分です。たとえば、示談金額、支払方法などです。

被害者側からすれば、たとえば、示談金として50万円を一括で、来月末まで銀行振り込みで支払ってほしいなどと提示し、相手方は、金額については、了承するが今月中に30万円を支払、残金は次のボーナス月に支払うというように交渉してください。

Q 示談書はいつ書きますか?

A 示談交渉によって、示談の内容が概ね決まった段階が作成するのが通常です。

もっとも示談書の案をまず作成してしまって、相手方に対し、この内容で示談したい、ということで提示するという方法でも構いません。

相手方がそのまま示談に応じる場合や、若干、修正して了承する場合などはそれでもかまいませんが、相手方が全く示談に応じないという場合は、示談書を作成したことがむだになってしまいます。そのような見込みがある場合は、やはりまず交渉を先行させるのが妥当です。

Q 示談書は誰が持つべきですか?

A 示談書作成の当事者が持つべきです。

保証人がいる場合は、保証人にも交付するのが妥当です。

なお、「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。」(民法第446条第2項)とされています。なお「電磁的記録」でも構いません(同条第3項)。

Q 示談書は捨ててもいいですか?

A 示談書を何のために作成したのかによります。

示談書を作成した目的が達成されれば、廃棄しても良いと思います。

たとえば交通事故の加害者の場合、示談金の支払についての領収証(または送金記録)などと共に、損害賠償責任を履行したことの証拠となりますので、責任追及される可能性のある期間、保管しておく必要がありますが、時効期間が満了すれば、廃棄してもかまわないと考えることもできます。

示談書には、個人情報や人に知られたくない情報が記載されている場合もありますので、廃棄する場合は、適切な方法をとるのが妥当です。

Q 示談に応じないとどうなる?(示談を拒否するとどうなる? 示談を拒否した場合のデメリットは?)

A これは状況によります。

示談を拒否するのが、加害者であれば、訴えられる可能性があります。訴えられても無視した場合は、欠席裁判となりますので、相手方の請求通りの判決が認められる可能性があります。訴えられるリスクが低いケースもありますが、加害者であれば、示談交渉には対応するのが妥当です。

たとえば刑事事件の被害者が、拒否した場合はどうなるでしょうか。

示談に応じない場合は、被害者の側から、加害者を訴えるなどのアクションを取る必要があります。

損害賠償命令制度もありますが、刑事事件は、事案によっては加害者が起訴されない場合もあります。その場合は、この制度を利用することができません。

また民事で損害賠償請求しても、わずかな金額しか支払い命令なれない可能性もあり、そのために民事訴訟を起こすこと自体、費用対効果を考慮すると得策ではなく、その結果、民事訴訟を提起することを断念せざるを得なくなる場合もあります。

さらに、刑事事件の加害者(または弁護人)が、示談交渉を持ち掛けてきた場合、民事訴訟の基準よりも高額の賠償を受けられる場合もあります。

たとえば、私が聞いた話ですが、電車内での痴漢事件の加害者が、逮捕され、弁護人から示談交渉を持ち掛けられたところ、加害者は定年退職直前の会社員で、勾留が長引くと、懲戒解雇されてしまい退職金の支払いを受けられなくなってしまうという状況で、しかも示談が成立すれば、起訴はされないと見込まれる事案で、被害者の方が、一般的な基準よりも高額(私の感覚では10倍程度の金額)の賠償を示談金として受け取ったという話を聞いたことがあります。これは私が担当した事件ではありませんので、事実かどうか定かではありませんが、刑事事件の場合は、起訴をかいするため、あるいは実刑判決を回避するため、被害者が民事訴訟による解決よりも高い金額での賠償を受ける場合もあるというのは事実です。

刑事事件の弁護人から示談について話があった場合は無下に断らない方がよい場合もあります。

Q 示談書の作成は誰に依頼すれば良いですか?

A 当事務所で承っております。

事案に内容などにより、受けられない場合もありますが、一般的な示談書であれば、対応できます。

料金については、1時間の法律相談時間内に完成できるような内容でしたら法律相談料(2万2000円)だけいただきます。示談書作成料として別途いただきません。法律相談後に示談書案を作成する場合は、別途料金をお支払いいただきます。当事務所の一般法律相談については以下のページをご参照ください。

遠方の方でも構いません。有料電話法律相談で事情をお伺いするということでも構いませんし、Zoomなどのオンライン相談実施後に、作成することもできます。

知り合いの弁護士、またはお近くの弁護士に依頼したいという方は、まず弁護士に事情を説明し、示談書の作成が可能かどうか聞いてください。ただ弁護士の場合、示談書の作成だけを依頼を受けるということをしていないという人もいると思います。

行政書士が示談書作成業務を行っています。行政書士の方に依頼するのが良いのかどうかについてはここでは記載しません。

Q 示談書を作るのにいくらくらいかかりますか?

A 金額が決まっているわけではありません。

弁護士や行政書士などに依頼する場合は、依頼する相手によっても違いますし、依頼する内容によっても違います。事前に見積もりを取るようにしてください。

Q 示談書は、どこに提出しますか?

A 示談書の作成目的によります。

刑事事件の示談書の場合、検察官や裁判所に提出するのが通常ですが、いずれにしても弁護士(弁護士人)が対応します。

交通事故などの示談書については、万一紛争になった場合に示談成立したこと、およびその内容を証明するために証拠として裁判所に提出します。

示談金を送金する際に、銀行で確認を求められることもあります。

Q 示談書は、証拠になりますか?

A 証拠になります。

というより、むしろ証拠とするために作成するといっても過言ではありません。

Q 示談交渉は本人以外でもできますか?

A 本人が未成年者の場合または成年後見人がいる場合は、法定代理人である親権者、成年後見人が、示談交渉を行うことになりますが、そのような場合でなければ、示談交渉を本人以外で行うことができるのは、原則として弁護士です。一部、例外もありますが、例外に当てはまるかどうかについては、個別にご相談ください。

なお一回限りであるから許されるとか、親族だから良いとか、まだ報酬をもらってないから良いということはありません。

ある法律事務所のウェブサイトに、示談交渉を代行するという行為については、資格制限はなく、誰でもできるという趣旨のことが記載されていましたが、誤解を与える表現だと思います。どのような内容を示談交渉の代行と捉えているのか不明ですが、いずれにしても適切ではない表現であると思います。

因みに弁護士資格等がない者らが,ビルの所有者から委託を受けて,そのビルの賃借人らと交渉して賃貸借契約を合意解除した上で各室を明け渡させるなどの業務を行ったという事案について,裁判所は、弁護士法72条違反の罪が成立するとしました(最高裁判所第一小法廷 平成22年7月20日決定)。

Q 示談で弁護士費用を相手方に請求できますか?

A 相手方の意向によりますし事情によります。

ただ民事裁判では、請求できるとしても一定の範囲に限られます。実際に支出する弁護士費用全額ではありません。

そのため示談でも弁護士費用全額の支払いに応じることは少ないと思います。

Q 示談書は手書きで作成しても良いですか?

A 手書きで作成してもかまいません。読める字で書いてあれば問題ありません。

Q 示談書にシャチハタで押印してもいいですか?(示談書に認印は使えますか?)

A シャチハタは押印としては認められないのが通常です。

認印でも押印として認められます。

ただ本人が署名しておらず、印鑑も他人が押印しているのであれば、示談は不成立になります。

実印の場合は、本人が知らない、と主張していもと成立を否定することは難しくなります。

Q 示談書が2枚になる場合はどうすればいいですか?

A 私は個人的には、なるべく1枚に収まるようにしていますし、A4の用紙1枚に入らない場合は、A3にプリントしたり両面印刷にしたりしていますが、2枚でもそれ以上でも問題ありません。

その場合は、それぞれに署名捺印して確認するか、割り印を押して同一性を担保します。契約書のように契印テープで閉じるという場合もあります。

Q 示談書 書かないとどうなる?(示談書 なくても大丈夫?)

A 示談は、法律上は、「和解」という類型の契約です。

契約は、口頭でも成立するのが原則です。

ただ口頭では、どの様な示談が成立したのかの確認が難しいですし、示談が成立したことの立証が難しくなるので、示談書を作成するのが望ましいです。

とは言え、実際の裁判実務では、口頭での契約でも有効と判断して、その口頭での契約が合意(示談)が成立していることを前提に当事者の主張を認めたり、認めなかったりしています。

ただ実際には、本当に合意が成立しているのか微妙なケースについても、あるいは実際に合意が成立していないことが明らかなケースであっても、黙示の合意が成立したなどとして、判断をするという場合もあります。

いずれにしても示談書という書面を残さないと、紛争となる可能性が高まりますので、書面として残しておくことが望ましいと言えます。

Q 示談書なしで慰謝料を払うことはできますか?

A できますが、避けるべきです。

その理由は、「Q 示談書 書かないとどうなる?」についての回答を参照してください。

Q 示談書に割印(合わせ印)は必要ですか?

A なくても有効であるという意味で、必要ではありません。 一体性を担保するためにあった方がよいです。

以上

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