「家計全体の状況」の記載方法

「家計全体の状況」の記載方法についてご説明します。

なおこの記事は、当事務所の弁護士にご依頼いただいた方のために提供するものです。それ以外の方は、作成にあたって以下の記載をご参照いただいても構いませんが、実際に記載しご自身の依頼する弁護士に提出するにあたっては、ご自身の弁護士の指示等に従ってください。

自己破産の申立てをする際の裁判所への提出書類の中に、「家計全体の状況」があります。下の画像は、東京地裁が指定している書式です。

この書式に従ってご説明します。この書式のPDFファイルはこちらです。

全体共通の注意点

1か月間の収入と支出について記載することになっています。

令和3年11月分について記載する場合は、11月1日から11月30日までの間に、(1)家計に入ってきたお金(収入)、及び(2)家計から出て行ったお金(支出)について記載してください。

なお必ずしも1日からとする必要はありません。25日が給与振込日の場合、25日からの1か月分として、収入と支出の状況を記載することもできます。

実際の入出金について記載してください

たとえば家賃を例にご説明します。

家賃は通常、前払いですから12月分の家賃は11月末までに支払うと思います。したがって11月分の「家計全体の状況」には、11月1日から30日までに支払った、12月分の家賃の支出について記載してください。しかしうっかりしていて30日までに家賃を支払うのを忘れてしまって、12月1日に家賃を支払ったという場合は、11月1日から30日までの間に家賃の支払はしていませんので、「0」あるいは「なし」と記載し、欄外に「11月中に支払わなかったため」などと簡単に説明を記載してください。

反対に、たとえば11月分の家賃を11月1日に、12月分の家賃を11月30日に支払った場合、11月1日から30日までに支払った家賃は2か月分となりますので、家賃2か月分の合計額を記載し、やはり欄外に2か月分支払ったことが分かるように簡単に説明を記載してください。

勤務先から支給される交通費について

勤務先から、交通費の支払を受けている場合は、収入の欄に記載し、他方で支出の欄にも交通費を記載してください。

たとえば、交通費は毎月支給されているが、3か月定期を買っているという場合、その月は定期代を支払っていないということもあると思います。その場合は収入の欄には交通費として支払われた金額を記載し、支出の欄には定期代分としては記載しない(その他の交通費のみ記載する)、ということになります。

スマホ決済について

くどいようですが、支出欄には11月1日から30日までの間に実際に支払った金額を記載してください。たとえば、実際に買い物などをしたのが9月だとしてもスマホ決済などで決済し、電話会社にその買い物分の代金を支払ったのが11月中であれば、11月分の支出として計上してください。また9月にスマホ決済で靴を購入し電話会社からの請求に従ってその代金を支払ったのが11月ということであれば、11月分の家計全体の状況に記載する必要があります。

プリペイドのチャージについて

反対に、プリペイド式の場合は、チャージしたときを基準としてください。たとえば11月中にチャージをしているときは、「その他」の欄に「○○へのチャージ」と記載して下さい。なおチャージ残高が高額となっている場合は、弁護士にその旨を説明し、対応について協議してください。

チャージ残高やポイントでの決済について

さらにチャージ残高での決済やポイントでの決済の場合は、新たな資金の支出はありませんので、家計全体の状況に記載する必要はありませんが、チャージ残高が高額となっている場合やポイントで多額の取引が可能な場合などは弁護士にその旨を説明し、対応について協議してください。

収入の欄について

収入の欄には、家計に入ってきたお金を項目ごとに記載してください。預貯金口座に振り込まれた金額と現金で受け取った金額を記載してください。

前月繰越金について

収入の欄の上部にあります。「前月繰越金(現金)」と「(預貯金)」があります。

前月繰越金(現金)

「前月繰越金(現金)」 は、10月31日から11月1日に日をまたぐ時点で所持している現金の金額を記載してください。お財布に入っている金額やご自宅などで保管している現金の金額です。

前月繰越金(預貯金)

前月繰越金のうちの 「(預貯金)」 は、ご自身の預貯金の口座の10月31日から11月1日に日をまたぐ時点での残高です。複数の預貯金口座をお持ちの場合は、全ての口座の残高の合計額を記載してください。

収入の欄の各項目について

ご自身と配偶者などのご家族の収入について項目ごとに記載してください。ご家族が別居されていても家計が一体であれば、その方の収入についても記載します。同居しているが家計は別という場合についての対応については弁護士に相談してください。

ヤフオクやメルカリについて

たとえば、ヤフオクやメルカリなどで、物が売れて代金を受け取った場合は、収入の欄に記載してください。

キャッシュバックについて

キャッシュバックを受けたという場合は、やはり収入の欄に記載してください。

暗号通貨について

暗号通貨を受け取った場合は、個別に弁護士に相談してください。

支出の欄について

支出の欄の各項目について

ご自身と配偶者などのご家族の支出について項目ごとに記載してください。収入の欄と同様に、 ご家族が別居されていても家計が一体であれば、その方の収入についても記載します。同居しているが家計は別という場合についての対応については弁護士に相談してください。

外食費について

外食費は、基本的には「食費」の欄に記載しますが、食費全体に占める外食の割合が大きい場合は、「娯楽費」の欄に記載し、ご説明を付記していただくか、「その他」の欄に記載し、やはりご説明を付記していただく必要があると思います。

日用品について

日常の生活に使う、こまごました品物です。たとえば洗剤、トイレットペーパーなどです。

経済産業省のウェブサイトに日用品について以下のように説明があります。

「日用品」とは、日常生活に密着した物品であって、具体的には、家具、オフィス家具、金属製品、合成樹脂製品、陶磁器、ほうろう鉄器、漆器、ガラス製品、木竹製品、刃物、スポーツ用品、ベビー用品、文房具、楽器、玩具、喫煙具、眼鏡、宝石などを政策対象としています。

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/seikatsuseihin/nichiyo/index.html

しかし「家具、オフィス家具、金属製品」は、金額にもよりますが、裁判所が考えている「日用品」ではないと思います。「楽器」、「宝石」についても同様です。

一つの値段が概ね1万円以上である場合は、対応について弁護士にご相談ください。

水道光熱費について

請求書や支払済証などを確認して正確に記載してください。東京の場合は、水道料金の支払は2か月に1回のはずですので、水道光熱費の金額が2カ月間、同程度ということは基本的にはないはずです。

通信費について

ひな型に記載されている通り電話代などです。インターネットプロバイダー料金は、「通信費」で良いと思います。

他方携帯電話会社からの請求に基づき支払った金額でも、スマホ決済の料金(たとえばd払い)などは、支出の原因は通信ではなく、お買い物などですので、通信費には計上せず、通信費以外の欄に振り分けて下さい。

交通費について

全体共通の注意点でも書きましたが、たとえば3か月定期を購入しており、その月は定期代を支払っていないという場合は、その月はその分の支出がありませんので支出欄には記載しないでください。

被服費について

「被服費」について、コトバンクには、

家計における衣生活に関する諸費用をいう。その内容は総務省統計局の家計調査によると,和服,洋服,シャツ下着,その他の衣料 (靴下・手袋類,生地・糸類,タオル,寝具) ,身のまわり品 (はきもの,傘,帽子,服飾品,かばん類,スポーツ用衣類,仕立代,洗濯代,被服賃貸料) を含む。

と記載されています。

傘や洗濯代が被服費なのか若干、疑問ですが、概ねこの記載に従って良いと思います。迷ったら弁護士に相談してください。

交際費について

会計用語の交際費とは異なると思います。贈答品購入費やご祝儀などです。

交際費となるか分からない場合は、弁護士に相談してください。

返済について

自己破産する方は、支払不能となってから一部の債権者への支払は認められませんが、現実問題支払をしてしまっている場合は、記載してください。

また家計が一体となっているご家族が返済するという場合もあると思います。その場合は、誰の支払分であるのか、簡単に説明を付記してください。

子どものお小遣いについて

お子様のお小遣いなどについては、「その他」の欄に「子どものお小遣い」などと記載して、その金額を記載すればよいと思います。お小遣いの使途についてまで説明する必要は基本的にはないと思います。ただ家計全体に占めるお小遣いの割合が多い場合は、その使途についても記載と説明が必要になると思います。

次月繰越金について

前月繰越金と同じ要領です。 11月30日から12月1日に日をまたぐ時点で所持している現金の金額及び預貯金の残高を記載してください。

「合計」欄について

収入の欄も支出の欄も最下部に、「合計」欄があります。正しく記載されている場合、この欄の金額は一致しているはずです。一致していない場合は、どこかの金額が実体と一致していないということになります。

金額が合わない場合は、弁護士に相談してください。

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