外国籍のご家族をお持ちの方へ

遺言書を書いてもらわないと、実際上、遺産を相続できない場合があります。なぜかというと、誰が相続人か明らかにできない場合があるためというのが、その原因の一つです。

ではなぜ誰が相続人か明らかにできないと相続できないのでしょうか。

それは、遺言書がない場合、相続の手続をするために相続人全員の印鑑証明書(またはこれに代わるもの)が必要となります(例外もありますが、原則的には、これが必要となります。)が、被相続人が外国籍の場合は、誰が相続人となるのかを明らかすることが簡単ではありません。

たとえば預金の相続手続きについて、説明します。

遺言書がある場合は、金融機関の窓口で次の書類の提出を求められます。

遺言書

検認調書または検認済証明書(ただし遺言書が公正証書遺言の場合や遺言書制度を利用した場合は、検認手続は不要)

被相続人が亡くなったことを確認できるもの

預金を相続する人(遺言執行者がいる場合は、遺言執行者)の印鑑証明書

これに対し遺言書がない場合は、誰が相続人となるのかを明らかにするため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本または全部事項証明書が必要であり、さらに相続人全員の印鑑証明書も必要となります(さらに相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書も必要です)。

具体的な必要書類については、銀行協会のHPをご参照ください。

預金相続の手続に必要な書類 | F.銀行で手続き | 一般社団法人 全国銀行協会
お取引金融機関が預金の相続の手続をするに当たり提出を求めている書類は概ね以下のとおりとなりますが、相続の方法や内容、お取引金融機関により、必要となる書類が異なる場合があります。くわしくは、お取引金融機関にお問い合わせください。

被相続人が外国籍の方の場合は、戸籍謄本(または全部事項証明書)がありませんので、それに代わるものを用意する必要があるわけですが、多くの場合それが簡単ではありません。

以上のとおり遺言書がある場合は、相続しない法定相続人の印鑑証明書は必要ありません。

これに対し、遺言書がない場合は、相続人全員の印鑑証明書(またはこれに代わるもの)を提出する必要があります。

相続人全員が明らかとなっており、協力してもらえる場合は、問題となりませんが、誰が相続人となるのか明らかにすることができないと、相続手続きを取ることができなくなってしまいます。

被相続人が日本人であれば、戸籍謄本(または全部事項証明書)で、誰が相続人となるのか、基本的には明らかにすることができます。なお日本人の場合でも行方不明者がいると、印鑑証明書(またはこれに代わるもの)を用意できないという問題が発生しますが、その場合は不在者財産管理人という立場の人を選任し、その人に相続手続きに協力してもらうことで、手続きを進めることができます。

これに対し、被相続人が外国籍の場合、戸籍謄本(または全部事項証明書)がなく、誰が相続人となるのか、明らかにすることができず、上記の方法で問題を解決することができません。

たとえば次のような場合は、典型的な例です。

外国籍の方が、日本で生活し、配偶者がいる場合(その配偶者が日本国籍でも外国籍でも同じです)、その方が亡くなった場合、その方について相続が発生します。

その方の配偶者が相続手続きをしようとすると、相続準拠法は、その方の国籍法によることになりますが、多くの場合、その子どもと配偶者が相続人になると思います。しかし外国籍の方の場合、戸籍謄本や全部事項証明書のようなものがありませんから、誰が子どもとなるのかを明らかにすることが困難となります。そのため相続手続きを進めることができません。

そのような場合に、弁護士等の専門家に依頼するとしても、費用が掛かってしまいます。費用が掛かっても相続できるのは、預貯金全額ではなく、そのうちの法定相続分のみです。そのため預貯金が少額であるような場合など、相続手続きを断念してしまっているはずです。

被相続人が外国籍の方の場合、特に相続人が誰なのか明らかにできないことが予想される場合は、遺言書を作成しておくことを強くお勧めします。

遺言書は公正証書遺言としておくことがベターです。

また自筆証書遺言の場合も、遺言書保管制度を利用すると検認手続きが不要となるなどのメリットがありますので、検討されるとよいと思います。ただこれにはデメリットもあります。

より詳しい内容について、確認されたい方は、法律相談をご利用ください。

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